朝日住宅

　「新居で初めて迎えた私の誕生日。主人が内緒で用意してくれたのが、ティファニーのマグカップでした。もったいなくて使ったことはありません（笑）」そうはにかむ奥さま。以前インテリアショップで働いており、北欧ヴィンテージや優しい色合いの雑貨が大好き。この家は、そんな彼女の意見をベースに設計されている。オープンラックを備えたキッチン、大きなディスプレイニッチ、階段下の装飾棚など、随所にセンスよく配置された雑貨たち。「これは主人と行った名古屋のインテリアショップで買ったもの。これはWebで探した北欧食器」そんな言葉から、思い入れと、夫婦の記憶がふわりと漂う。

　ご主人の趣味は車。「ちょっと行ってくるね」と言い残して、気軽に山梨（！）まで運転するほどドライブが大好きだ。彼が休日に1人で出かけてしまうと、奥さまは自宅で模様替えを楽しむ。季節の小物を飾ったり、買ったばかりの雑貨を置くスペースを作ったり、隣の祖父母の家からもらってきた庭の花を生けたり。「ただいま」そうドアを開けたご主人は、すぐにディスプレイの変化に気がつき、感想を教えてくれるという。好みが異なる夫婦だけれど、3か月に一度の温泉旅行は共通の趣味だ。「旅先はいつも和風旅館。温泉が好きなんですが、帰宅すると“家もいいな”と毎回感じます」そう彼らは笑う。

　“食事は一緒に”を心がけ、休日はご主人が調理を担当する。使う食器は2人で選んだ北欧テイストの陶器で、食洗機は彼がこだわって導入したドイツ製の「ミーレ」。この家にあるものすべてに“好き”が凝縮され、暮らしぶりからお互いを尊重する姿勢が伝わる。例えば、ご主人は1人で出かけるのが好きだけれど、奥さまがリビングからグリーンを眺めたいと言えば、DIYでテラスにパーゴラを作ってプランターを吊り下げてくれた。東京で開催された「リサ・ラーソン展」に車で連れて行ってくれたことも。鮮やかなグリーンや、リサ・ラーソンの作品が彩る空間で2人はくつろぐ。「次はこれを買おうかな」「草津温泉良かったよね」。何気ない会話に息づく、お互いを大切に思う気持ちから、充実した日常が垣間見えた。