二世帯住宅とは?改めて考えてみる
1975年、旭化成ホームズ(へーベルハウス)が二世帯シリーズを発表したのが、二世帯住宅のはじまり。意外と新しい暮らし方なのです。
二世帯住宅のメリットは、土地や建築費、光熱費といったコスト面の効率化もありますが、一番には育児・介護・家事を互いにフォローし合えること、近くにいる安心感でしょう。ただ近くに居る反面、さまざまな配慮が必要です。お互いに適度な距離感で暮らせる二世帯住宅とは、いったいどんなカタチなのか?考えてみましょう。
生活空間をどうわけるか、同居スタイルの決め手は?
二世帯住宅の同居スタイルは、息子夫婦同居や娘夫婦同居といった両世帯の関係や暮らし方によって変わり、間取りづくりを左右する3つかのポイントがあります。それが、キッチン、風呂、玄関です。一つずつ見ていきましょう。
●キッチン
まず最も優先度の高いキッチンから。キッチンを2つにするか、1つにするか?は、「夕食の場所」が一緒かどうかで決まります。場所が一緒であれば、たとえ夕食時間がずれても食べる料理はほぼ一緒のケースが多いためです。息子夫婦同居の場合は、2つに分けることが多いようです。食材や調理器具の配置から、料理の味付けについても、育ってきた環境が違えば異なるためです。例えば「キレイにする」という感覚でさえも差があり、案外気になるものです。一方、娘夫婦同居の場合は、1つの場合が多いと言われてきました。親子のため価値観の問題が少なく、むしろ家事フォローしてもらえるメリットの方が高いと考えるためです。しかし、母娘でも価値観の違いがある場合もあり、最近では別々のケースも増えて
います。また、共用のキッチンに加えてサブキッチンを設置する場合もあります。夕食は一緒だが朝食の時間が早い、朝早くお弁当を作る、深夜まで晩酌をしたいなどのニーズがある場合です。食事という瞬間で見れば必要ないことも、早朝、深夜、来客時など場面で必要になる場合があるので注意しましょう。最近の傾向としては、片親の場合はシングルキッチンが多く、その他は基本的に分ける家が多くなっています。
●浴室・お風呂
続いてお風呂。入る順序を気にしながら入ることにストレスを感じるなら別々に用意した方がいいでしょう。統計的には息子夫婦の場合は別々が多く、娘夫婦の場合は半々。婿さんが気兼ねなく入れるかどうかがポイントです。お風呂のピークタイムが揃ってしまう場合は、好きな時間に入れないと不満になることも。また朝シャワーを使う場合は、その時間に洗面所や洗濯機が使えなくなってしまうので注意が必要です。
●玄関
へーベルハウスでは2つ設ける場合が全体の4割ぐらいだそうです。昔は玄関がないと世帯としてのメンツが立たないと言われましたが、今はそんな風習はなくなりました。2つに分ける場合は、次のような理由が挙げられます。
・扉の開け閉めの音が気になる。
・来客を迎える場なので、自分らしい玄関にしたい。
・買い物の内容を見られたくない。
・「いってらっしゃい」「どこに行くの?」「何時に帰ってくるの?」など、挨拶のやり取りが煩わしい。
などです。また1つにする場合は靴の数が多くなるので、十分な収納を準備するか、シューズクロークを用意しておくといいでしょう。
上下に分ける? それとも左右にわける?
世帯ごと独立させる場合に、上下か左右かに大きく分かれます。ヘーベルハウスの場合には上下に分ける場合が多いようです。間取りの自由度が高く、広々とした空間を作りやすいためです。土地が十分に広ければ左右も検討しやすいでしょう。上下の場合は、2階の音が気にならないように防音対策が必要となります。
ライフスタイルは年々多様化しています。今回のケースが完全に当てはまらない場合もあるかもしれません。一つの参考として見てもらえるといいでしょう。
最後に、二世帯住宅を成功させる秘訣は?
それは“お互いに適度に無関心でいること”、“他人と住むという感覚で住むこと”です。実は二世帯住宅を長年取材してきて、“相手世帯にいかに気を使わせないかに、気を使っている”家庭がとても多いことがわかりました。同じ家に住むのだからみな家族という考え方は捨てた方が、かえってうまくいくのかもしれません。
※最近の研究結果も「くらしノべーション研究所」で公開中。