家族全員が家事の流れやしくみを知ろう
家事ラクにするには、一般的に「間取り計画でどこをチェックするか?」という話になりますが、その前に大切なポイントがあります。
それは家族全員が家事の流れやしくみを理解することです。家事の流れやしくみを理解することで家事の大変さを知り、協力しようとする心構えや家族の和が生まれてくるのです。その上にたって一日の行動や作業、さらには季節ごと、時にはシチュエーションによって変わる家事のあり方までを含めて考えてみることです。
間取りを計画する際、家族の団らんや個室の充実も大切ですが、家事ラクという視点で考えることで新しいコミュニケーションや意外なヒントが生まれることもあります。
これまでのありがち失敗事例はどんなところ?
住まいは間取りを十分考えたつもりでも、いざ住んでみると「ここはこうすればよかった」など後でいろいろな不満が出てきます。
ありがち失敗事例は大きく分けると、以下の3つとなります。
1.ゾーニング計画の失敗
2.収納不足
3.平面から読み取れなかった失敗
1つずつみていきましょう。
1.ゾーニング計画の失敗
ゾーニング計画とは建物の空間を機能や用途別にまとめて効率的に配置することです。
具体的にどんなことかといえば...
・ゴミを出すときにリビングを通らなければならない
・キッチンから直接食品庫に行けるようにすれば動線がスムーズだった。
・雨の日や寒い日に洗濯物を干すところがあればよかった。
などがあります。
2.収納不足
いろいろな物があふれている現代生活では物の量をコントロールするのではなく、
いかに効率よく収納できるかにエネルギーが注がれているところがあります。
この効率よく収納できるかが家事ラクに繋がっていきます。
具体的にはどんなところで収納不足が起きるかといえば...
・子ども室のクローゼットの奥行は60cmなのでフトンが入らない。収納場所から夏と冬運ばなくてはならない。
・クローゼットの一部を洗面室から使えるスペースにすれば、洗剤やシャンプーのストックに使えた。
・外まわりの収納は意外と忘れられていることが多い。
などが上げられます。
3.図面から読み取れなかった失敗
図面はあくまでも部屋の間仕切です。
したがって家族それぞれが一日どのように動いて近未来はこんな感じになるだろうとある程度の予測をたてることはできます。
しかし図面から読み取れないものがあります。それは音や熱、臭いなどです。
家事ラクに直接つながらないかも知れませんが、子どもが大きくなって2階の音や階段の音がうるさい、
また、中廊下に臭いや湿気がたまり気になることもあるでしょう。
つまり、これらもイライラにつながり家事に影響を与える結果になるのです。
【図面から読み取れなかった失敗の例】
・中廊下がうす暗く、いつも臭いや湿気が溜まっている感じがして常に掃除のことが気になってしまう。
・適切な場所にコンセントがなく掃除のときに不便、特に階段まわりにないことが多い。
・掃除機はどこに収納する? 1階ですか? 2階ですか?それともそれぞれに置きますか?
家事ラクを考える7ヵ条
これらの失敗事例をふまえながら家事ラクを考える心構えとして7つの項目をあげてみました。
住まいづくりに活かして下さい。
一. 動線計画の優先順位を見極めるべし
動線計画は家事動線を中心に。家事動線は洗濯動線です。
一. 正しいキッチン配列を考えるべし
キッチンの配列は冷蔵庫→洗う(シンク)→切る、きざむ(調理台)→焼く、煮る(レンジ台)の流れがスムーズにいく配置が基本です。
一. 良い収納の極意を知るべし
“すぐにとり出せること”、それが良い収納の原則です。
一. 家事コーナーを確保せよ
キッチンや洗面室に小さくてもよいので家事コーナーがあると重宝します。
一. 掃除・メンテのしやすさを忘れるなかれ
家事ラクを維持したければ、キッチン、浴室の掃除のしやすさに配慮しておくことです。
一. ながら家事ができる工夫を盛り込むべし
例えば料理をしながら洗濯物をたたむなど、家事のあい間のすきま時間を有効に使えるような、間取り・配置を心がけましょう。
一. 家族みんなで家事をすべし
家族のつながりをつくります。
家事ラクを考えることは快適空間をつくること
家事ラクは主に作業性や効率の良さが求められます。
もちろん大切なことですが、もっと大きな意味で家事ラクは快適空間をつくることに繋がり、新しい住み方の提案にもなります。これまでの家事ラクを意識した実例を紹介しますので、参考にしてみて下さい。
写真①:キッチンの近くに設けられた家事コーナー。
写真②:階段部分に設けられた吹抜けから2階子ども室に声をかける。スムーズなコミュニケーションも快適な家事ラクです。
写真は全て、(株)佐川旭建築研究所設計
番外編 ~もっとも嫌いな家事は何ですか?~
この質問でいつも上位にあがってくるのが、「洗濯物を干す」と「アイロン掛け」です。
そのためか近年はノーアイロンのYシャツなども発売されています。
「洗濯物を干す」「アイロンを掛ける」このあたりを解決すればかなり家事ラクになりそうです。
特に洗濯物は家族4人として考えると、ベランダの長さが4.5m以上必要です。
庭で干す場合だと物干し竿3本以上はないと干しきれません。
そこで、雨の日にも対応できる間取りのアイデアを右の画像にて紹介します。