田畑が広がる浜松市郊外。その先の高台に古くからある静かな住宅地の一角に建つのが、まもなく築4年になる鈴木邸だ。
砂利が敷かれたエントランスに大きな木の扉。ファサードは杉板の鎧張りで、センスの良さと個性が既に感じられる設えだ。
「三角屋根の平屋風、各部屋は寝るだけのスペースで十分、階段はリビングを必ず通るようにしたい、とだけ伝え、デザインはほぼお任せしたんですよ」と語るご主人。そう聞くと、他のお宅とそう変わったところはないように感じるが、一番の違いは、とにかく家づくりに家族みんなでとことん関わったこと。内装屋を営むご主人と、エイジング加工が得意な雑貨作家の奥様、そして2人のお子さん。家族4人で自分達ができるところはとにかくチャレンジしてみたのだ。「ほぼ毎日、仕事や家事の合間に建築中の家に来て、大工さんたちと一緒に作業したんですよ。大変でしたけど」と笑顔で語る奥様。
お子さん達と柱をダークブラウンに塗り、11枚あるドアは奥様こだわりのエイジング加工を施した。漆喰壁の塗装に、庭のウッドデッキはご主人が主に担当、古材を使った屋外のベンチも奥様が手掛けた。もはやプロ顔負けの出来栄えだ。聞くと、あれもこれも、ほとんどが手造りではないかと思うほど。
「普通だったら、ここまで自由にさせてもらえないですよね。施工会社さんからしたら責任も取れないですし、本当にありがたいことです。いい意味で常識がずれていると言われましたけど、それを理解してくださって、自分達で自分達の家づくりができたのは幸せですね」とご夫妻はとても満足そう。
ちょうど高台の角に位置し、外からの目を気にすることもないため、このお宅にはカーテンがない。ここも常識外れだからこその素敵なところ。ちょうど古くから植えられていた大きな桜の木と周囲の木々が、リビングからの自然の借景として、暮らしに彩りをプラスしているのだ。
家を建ててから1年後に造ったというコンテナハウスが庭の桜の木の下にある。いずれ庭に倉庫を作ろうと思っていたところに、フォーバイシーさんのコンテナハウスがちょうどぴったりサイズだ。6帖ほどのボックス型のコンテナは、自分達で外も中も塗装し、棚を付け、床板を貼り、家族みんなの共有フリースペースに仕上げた。
家自体も、暮らしの中で用途に合わせて変えればいいし、当たり前に縛られることなく、オモシロイ使い方ができればいいという発想だから、コンテナハウスもこれといった用途は決めていないご主人。「倉庫としてももちろん使えますが、子どもが友達を呼んで遊ぶ時に、子ども部屋に限定せずにコンテナハウスを遊ぶスペースとして使うこともできるし、読書や勉強など何かに集中したいときに独りで篭ってもいいし、今は、自分の仕事の作業部屋としても使っています。家だけではなく、家族の誰もが自由に使えるスペースが気分転換になります」
お子さん達が成長したり、自分達が歳を取ったりすれば、時期、季節、使い手によって、用途は様々。発想は自由でいいのだ。
暮らしの中に遊びがあり、遊びの中に暮らしがある。「遊びは仕事より大事」とご主人。家族全員、外出するよりもこの家にいることが大好きだという。自然と友達も多く集まる家になっている。家もコンテナハウスも全てが自由な発想。鈴木邸には、型にはまらぬ自由さと遊びゴコロが溢れていた。
協力
フォーバイシー https://www.sumailab.net/4xc/
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