現在、整理収納アドバイザーやアドバイザー養成のためのインストラクターなど、「お片付け」のプロフェッショナルとして活躍している佐藤慶子さんのご自宅を訪問。
閑静な住宅街の中に、鮮やかな青を基調とした外観が映える佐藤邸は、6年前に新築し、これから30年先の老後まで見据えて建てたというお宅。広々とした玄関に迎えられ、リビングを入ると、もちろんすっきりと片付けられているものの、温かみのある優しい雰囲気に包まれている。それは、単なるモノを排除した無機的な空間として片付けられた家ではないからなのだろう。家への愛着があり、第一に人のために家がある。そこに住まう人の優しさが存分に溢れているからこその空間が広がっていた。
2009年に整理収納アドバイザーの2級を取り、翌年1級を取得した佐藤さん。当時、子育てがひと段落した頃、周りの友人が精神福祉士や調理師、アロマセラピーなどの資格を取得したり、得意なことを極めたりするようになってきた。でも、自分自身には特別に人から秀でたものがない。そんな風に思っていた時、“そういえば、私は小さい頃から片付けが好きだし、子育てをしている時も、家の中がいつもきれいに片付いていると、友人からも褒められたりしていた・・・そうだ、これを資格に結び付けてみよう”と思ったのが、整理収納アドバイザーの資格だったという。
今は、自宅も開放して講座を開いている佐藤さん。講師として心掛けているのは、ただキレイにするだけではなく、「家族が喜んでくれた」、「思い出を大切にしようと思えた」、「キッチンがキレイになったら娘さんが料理をするようになった」など、キレイにすることで、人と人の関係がよくなるということへの気づきの提供だという。
佐藤さんのところに来る方は、片付けが好きでもっと知りたい人、自分では片付けられない人。全く目的が違っていても、「片付けには、それぞれの価値観の違いもあるし、それぞれの住まい、そして暮らしがあるので、正解、不正解は決してないんです。同じ人でも結婚や家族が増えること、逆に減ることなど、その時々で生き方にも波があるから決して同じではないんですよね。その中で、どのように常に意識をして整えられるか、ということをお伝えできればと思っています。」と佐藤さん。
佐藤さんのキッチン収納を見せていただき、「キッチンはお掃除しやすいとか、お料理しやすいとか、それぞれの人の好みもありますね。見せる収納を楽しむ方もいらっしゃいますし。日本人は、どうしてもあったら便利だからとモノを増やしてしまいがちで、使わないものをどう収納するかを考えますが、ドイツ人の場合は、いつも使うものをどう収納するかを考えるんです。使わないものは、他の人にあげたり、売ったりすることもできる時代ですし、モノは“使う”道具としてうまく活用してあげられたらいいですよね。」と決して強要しないのが佐藤さんの優しさ。
視覚的に一目瞭然で認識できるように、ラベリングをうまく使ったり、食器は家族の人数に合わせて、よく使う好きなものを手の届くところに収納したりしてすっきりと。食器が変わるとお料理も違って見えるため、ぐるぐると使いまわして、全部の食器をうまくローテーションするように使うのもポイントなのだとか。
昭和30~40年代の高度成長期は、生産してモノが増える時代。戦争からの貧しい日本からモノを大事にする気質があるので、どんどん増えてしまう。それがいつしか家の容量を超え、モノのための家なのか、人のための家なのかが分からなくなってしまっている。
佐藤さんの暮らしから、決して無理せず、できるところから少しずつ意識を変え、「人」が中心である「家」として、心地よく暮らすことの大切さを教えてもらった