広告の値段で家は建つ!?
チラシで目にする家の値段、本当にその金額で家が建つのでしょうか。注意して見てみると、値段の横に小さく「本体価格」と書いてあります。本体価格(本体工事費)は、家を建てる時に必要なお金の内の70%~80%を占め、仮設工事や基礎工事、断熱工事、屋根工事、内装工事といった、「家」という「箱」が建つのに必要な工事のことを指します。また、総額のうちの15~20%は「別途工事費」と言われ、地盤工事や外溝工事、ガス工事、電話工事などの「箱」 周辺の工事のことを指します。残りの5~10%は「諸経費」で、契約時の印紙代、ローン手数料、引っ越し費用、地鎮祭・上棟式の費用、土地や建物の登記費用、火災保険料など、様々なものがあります。 その他にも、生活をするには、家具やカーテン、家電などを購入する必要があります。例えば、本体価格2000万円の家を建てる場合、別途工事費は570万円前後、諸経費は280万円前後、総額では2850万円ほどかかります。見積りが出てきてから驚くことがないよう、資金計画 は「本体価格」ではなく、総額で考えるようにしましょう。
坪単価で住宅会社は比較できない!?
住宅会社を比較する際によく目にする「坪単価」についても正しく理解しておきましょう。「坪単価」×「床面積」=「本体工事費」という式の通り、床面積に単価をかけた金額でも、「家」は建てられません。また、この式をひっくり返すと「坪単価」=「本体工事費」÷「床面積」となり、床面積の小さな家ほど坪単価は高くなるというからくりがあります。家ごとに大きさや設備が異なる注文住宅の場合、同じ住宅会社であってもそれぞれ坪単価が違います。そのため、坪単価で住宅会社同士を比較するのは難しいのです。坪単価は、比較の材料ではなく、どのくらいで家を建てられるかを考えるための目安ととらえておきま しょう。
家は建ててしまえばお金はかからない!?
例えばマンションを購入すると、購入後も月々管理費や修繕積立金がかかります。この月々の出費がないから一戸建てを購入するという方がいますが、一戸建てでも建てた後にお金はかかります。ひとつは、メンテナンス費用です。5年に1回は塗装や目に見えないところのメンテナンス、10年に1回は建物本体の維持のため、構造にかかわるメンテナンスが必要です。さらに、一般に木造住宅の寿命は30年とも言われており、35年ローンの場合、ローンを払い終わらないうちに、1度は大規模な修繕が必要となる場合もあるのです。マンションの場合はこれらのお金を住民から少しずつ集め、大規模修繕費用として積み立てています。一戸建ての場合も自主的に積み立てをしておかないと、突然の出費に焦ることになります。また、マンションなどから一戸建てに住むようになると、光熱費も増えます。最近では自宅で使うエネルギーを実質ゼロにする住宅(ZEH)も注目されており、これらの省エネ住宅を選択する人も増えています。建てた後にかかる税金もあります(図2)。
「不動産取得税」は、土地や建物を買ったり建物を建築したりした場合に納める地方税です。金額は、不動産の価格(課税標準額)×税率で算出されます。「固定資産税」は、土地や家屋といった固定資産を所有している人が納める地方税です。金額は、固定資産評価額×標準税率1.4%で算出されます。評価額は土地の場合、大きさや立地によって違いますが、だいたい公示価格の70%くらい。地価公示価格はインターネットで 調べることができます。新築の建物の場合は、建物の時価の70%くらいとなるのですが、 購入した価格には住宅会社の利益の分が含まれているので、金額の目安は、建物評価額=建物価格×70%(住宅会社利益分)×70%で求めることができます。例えば3000万円の家だと、固定資産税は20万円くらい(軽減措置は考慮していません)。これが、年月が経つと価値が落ちるため減っていきます。この他「都市計画税」も、固定資産税と共に賦課徴収される場合があります。
家は住宅ローンで全額一括払い
注文住宅の場合、その代金はいつ支払うのでしょうか。家が完成した時に、「はい、お会計3000万円になります。」というわけではないのです。図3のように、家の代金は工事を開始するタイミングから、複数回に分けて支払います。3~4回に按分して現金で支払うのが一般的です。
しかし、住宅ローンが実行されるのは、図の通り最後の支払いのタイミングです。住宅ローンは土地や建物を担保にして貸付を行うため、登記をした後でないとお金を貸してもらえないのです。最後の1回分しか住宅ローンで支払うことができないとなると、その前の支払分はどうしたらよいのでしょうか。そこで、多くの方が利用するのが 、「つなぎ融資」です。「つなぎ融資」とは、住宅ローンが実行されるまでの間、住宅ローンと同じ借入先から、一時的に借り入れをするもの。最後に住宅ローンが実行された際に、残りの代金を支払うと同時に、「つなぎ融資」を返済するという仕組みです。この「つなぎ融資」にも、期間に応じて利息がかかり、ほとんどの場合手数料もかかります。借入先を決める際は、「つなぎ融資」も含め、資金計画をシミュレーションしましょう。
このような耳の痛いお金の話も、建てた後に後悔しない計画的な家づくりのためです。備えあれば憂いなし。家を建てることで、その先も幸せに暮らしていってほしいという想いからであることを、ど うかお忘れなく...!