洗練された白をまとったS邸に入ると、自然のやさしい光を運ぶインナーコートとアイアンのスケルトン階段が迎えてくれる。「カーテンのない大きな窓」が欲しかったというS夫妻の希望で実現したその一角は、まるで一枚の絵画のように心やすらぐ静かな佇まいだ。しかし、S邸の特徴はそこだけではない。無垢の床と壁・天井まで漆喰に包まれた空間は、空気まで心地よく感じられ、全体としてシンプルでありながら上質な印象を受ける。例えば、ダイニングの造作収納は小さな窓と間接照明、テーブル上のペンダントライトと、すべてのバランスを計算して設計された。天井までのフルハイトドア、シンプルなスイッチ、壁にくぼみをつくって収めた機器パネル。S邸のデザインコンセプトだった「主張しない存在感」は、細部までこだわりながら完成されている。これから時を重ねていくほどに、さらに味わいを深めていくことだろう。