前橋・高崎
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家づくりは、自分たちにとって「必要なもの」と「そうでないもの」を見極める作業といえる。デザイン、素材感、利便性、住み心地、“世界にひとつ”を求める家族も少なくないだろう。S邸の玄関へ入って3秒、そこには夫妻が大切にする暮らしのシーンが広がっていた。「枝ものを飾りたくて」という奥さまの要望で設えられたのは、天井まで伸びる壁のへこみ。そこに季節を先取る花や緑が生けられ、帰宅する家族や来客をやわらかく迎えている。
「必要なもの」を集めていくとき、難しいのは、“今”だけでなく、“未来”まで見通さなければならないことだ。S夫妻も土地探しから3年以上に渡る検討期間において、依頼先の候補は大手メーカーから地場の会社へと移り、希望の間取りも大きく変化した。焦点が絞られるきっかけになったのは、見学会で出合った無垢の心地よさと子どもの誕生。やさしい素材と家族で過ごす時間のイメージが、プランに自然とブレンドされていった。
透き通るようなナチュラル感とスギのぬくもりで満たされたLDKに溶け込むのは、Sさん一家らしさの数々。小上がりの畳コーナー、愛犬バンタローくんの居場所、エアリアルヨガ用の金具に、雰囲気を損なわない神棚スペースに至るまで、「こうしたい」が1つひとつ添えられていった。暮らしやすさへの配慮も、検討が深まるにつれ、比重を高めた部分。玄関にはご主人の通勤用ロードバイクを停めても余裕の土間収納。水回りは北側にまとめられ、動線は2WAYに。家事を効率良くこなすことができ、無意識に増える奥さまの笑顔が家族の笑顔へと広がっていく。想定外は、テレビ前の造作カウンターにたくさんのミニカーが並べられ、レールの上を機関車が走ること。「何も置かない予定だったんですけどね」というご主人だが、その顔はなんだかうれしそうだ。
いま、一番幸せを感じるのは、家族で近所を散歩するひととき。消防署のほうまで遠回りしてお気に入りのポンプ車を眺めたり、農園で土のついた野菜を吟味したりする時間も嬉しい。新しい家族を迎えたあとも、お二人が望んだ丁寧な暮らしは変わらずに続いていくに違いない。
空間に溶け込むお二人のセンスが、居心地のよさを生む。左手水回りから右手勝手口まで、シンプルな家事動線が奥さまの負担を減らす
光と風に包まれながら、丁寧に紡いでいく家族の時間。笑顔が穏やかに連鎖する日常が心地良い
造作のカウンターは途中で高さを変えて、用途や成長に対応。窓の位置やサイズは外部からの視線に配慮されている
床には踏み心地やさしく、香り爽やかな静岡県産のスギを採用。デッキは手入れの手間を考え、タイル製に
洗面室から玄関方向を見通す。正面の壁に花瓶を置くスペースを用意
現しとした梁にエアリアルヨガの金具を設置。材木店として出発し、100年以上に渡り木と向き合ってきた『フジモク』では、強度や耐久性の高さに定評のある「富士ひのき」を構造材に使用しているため、強い力をかけても安心だ
数字では表せない心地よさに満ちた空間。“何気ない毎日”に喜びが感じられる家が完成した
富士市出身・30代夫婦と2歳の長男、愛犬バンタローくんが暮らす。ご主人はものづくりの会社に勤務、奥さまはヨガのインストラクター。現在2人目を妊娠中で、さらににぎやかな日々の予感。
吉田町出身。静岡大学工学部卒業後、医療用具メーカーにて製造マシンの設計・製作に従事。ある事故をきっかけに、“うれしさの近くにある仕事”をと考え、2002年にデイクリップをスタート。