BinO富士（西川リビング）

　「きのう友だちがきて、そのままの状態（笑）。朝ごはんは残ったスープをデッキで食べればいいねって」。そんなふうに自然体で迎えてくれたA夫妻は、のどかな風景を一望できるこの場所を選び、新たな生活をスタートした。庭には前の晩に仲間たちとバーベキューを楽しんだベンチやテーブル。さらに、ご主人念願のアウトドアストッカーには、キャンプ用品、フェスグッズが並び、「実はここでお酒を飲みながら、準備をしている時間が一番好きかも」と、にこやかに話してくれた。

　家の中もお二人の印象そのままにナチュラルな仕上がり。まず目についたのは、「フロ」や「トイレ」など一風変わったアイアンサイン。「酔った友だち用です」と笑うお二人の小さなユーモアが、不思議な温もりとなって、そこかしこに溶け込んでいる。LDKの心地よさは、開放感と親密感のバランスから生まれたもの。音楽に耳を傾けたり、デッキで本を開いたり、ビールのお供を準備したり。思い思いの場所で過ごしていても、声や気配はさりげなく行き交い、その時間は穏やかに重なっていく。

　愛猫おもちくんとの暮らしも大切なテーマだったと話すお二人。梁を利用した高い位置に居場所が用意され、入ってもいい部屋には専用の出入り口が設けられた。カメラマンとして活動する奥さまの作業部屋は、ときに小さな子どもたちがやってきてスタジオに。「少しでも自然な明るさの中で撮れれば」と、この部屋だけは天井の色も白くしたのだそう。コンパクトな平屋で、さらに個室が2つも用意されているのはちょっとした驚き。寝室は落ち着きのある空間に、家具や照明で個性をプラス。本棚をスライドさせると現れる隠し部屋も楽しいサプライズ。書斎、客間、楽器のプレイルームと、時に応じて便利に使っているのだそう。

　自然豊かで、一緒に笑える仲間がいる、そんな生まれ育った場所を愛する気持ちがじんわりと感じられるA邸。友人が作ってYouTubeにアップしたこの家の紹介動画は、幅広い共感を集め、30万回以上も再生されているという。家は単なる箱ではなく、好きなものへの愛の結晶。お二人の笑顔が、そう教えてくれた。