田畑工事

ある晴れた暖かな春の日。深い軒のあるウッドデッキにちょこんと座ったOさんの長女は、最近お気に入りの長靴を履いて駆け出そうとしていた。「もうすぐ2歳になるんですが、娘は庭が大好き。晴れの日も長靴を履いて走り回っています」そう笑顔で教えてくれたのは、まもなく第2子を出産する奥さま。広々とした庭はご主人自らショベルカーで土を掘り起こし、芝生を張り、コンクリを流し込んでつくりあげたもので、入居1か月という短期間でここまで形にしたというから驚く。今も休日は庭づくりが日課で、長女はいつも小さなシャベルを持って手伝ってくれるのだという。

天竜川のそばで育ったご主人は、幼い頃から川や山が遊び場だった。今では3,000m級の日本アルプス登山から狩猟、ダイビング、キャンプなどアウトドアのすべてを楽しみ、大自然の中で生きることを楽しんでいる。だからこそ自分の家は「四季を感じる広い庭があり、子どもと一緒に思う存分遊べる空間」であることを求めたという。そこで、木・草・土・石・紙といった自然素材を重視し、大工職人の手仕事で構造美を生み出す『田畑工事』に家づくりを委ねた。完成した家は、庭も含め全体が1つの空間になるようなバリアフリーの平屋。天竜ヒノキや無垢のスギ板、漆喰が織りなす真壁作りの大空間は、勾配天井に現した梁が芸術品のよう。LDKを中心に玄関から子ども室やロフト、洗面所や庭まで一体化し、家族の息遣いと笑い声をすべての場所に届けてくれる。