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【東海地震に備える】 耐震等級2相当、築浅の木造住宅でも倒壊!  構造設計の専門家が見た熊本地震

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阪神淡路大震災から21年経っても変わらない木造住宅の倒壊被害

阪神淡路大震災から21年経っても変わらない木造住宅の倒壊被害

私は1995年に起きた阪神淡路大震災を視察した際、構造計算していない木造住宅が軒並み倒壊している惨状を目の当たりにし、「このような悲劇が二度と起きないよう、日本中の木造住宅を地震で倒壊させない!」と決意しました。当初は地元新潟を中心に木造住宅の構造計算を行ってきましたが、一人の力では限界がありました。そこで、構造安全性に対する知識を持ち、構造計算ができる設計者を育成することで安全な木造住宅が増えると考え、2010年に「構造塾」を発足、全国各地で普及活動を行ってまいりました。
ところが、この5月末に熊本県益城町を訪ね、しらみつぶしに街を歩いてみたところ、21年前の阪神淡路大震災のときと何も変わっていない状況に愕然いたしました。古い建物だけでなく、築浅の木造住宅までもがあまりにもたくさん倒れていたため、今回は原因を徹底的に調査してきました。

前震に耐えた家に戻ったばかりに本震で命を落とすケースも

前震に耐えた家に戻ったばかりに本震で命を落とすケースも

益城町で4月14日に亡くなった方は8名、16日に亡くなった方は12名に増えています。これはなぜでしょうか? 14日に避難した方が建物が持ちこたえたので安心して戻ったところ、16日未明に起きた本震で建物が倒壊し、命を落としたとみられます。
聞き取り調査によると、築100年の古い家でも、震度7の揺れに耐えたのだから安全だと思った方が多かったようです。それは大きな誤解です。建築基準法が求めている建物の耐震性能は、中地震(建物の使用期間中に数回遭遇する程度の地震)に対して損傷せず、地震後も特に修復を必要としないこと。また、大地震(建物の使用期間中に一度遭遇するかもしれない大規模な地震)に対しては倒壊せず、人命が守られることです。ただ、一度大地震を経験した建物は耐震性能が著しく低下しているので、中に入るのは危険です。外からは健全に見えても、壁をはがして構造を見てみないと安全かどうか判断できません。一般消費者はそこまで知らないし、一度耐えたのだから大丈夫と思っても無理はありません。震度7を経験した家は、耐震診断・耐震補強をしない限り二度と住めません。そのことをきちんと施主さんに説明した住宅会社もあれば、「もう住んでも大丈夫ですよ」と伝えてしまった方もいたようです。この知識の差が人の生死を分けたとも言えますね。

倒壊する建物と倒壊しない建物との違いは?

倒壊する建物と倒壊しない建物との違いは?

倒壊した古い建物を調べると、重い瓦屋根と土壁、全面開口、壁配置のバランスも悪く、地震で壊れないのが不思議なぐらいでした。ただ、全面開口でも壊れていない家も意外と多く、これらに共通していたのは、天井から垂れ下がったような形をしている「垂れ壁」や、壁の下半分に板材等を張りめぐらせた「腰壁」の存在です。これらが地震の力に耐える補助的な役割を果たしたのではないかと考えられます。また、益城町は東西に活断層が走っているので、建物が西側に倒れるケースが多く、西側の家に寄りかかって倒壊を免れた家も多く見られました。
 

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築10年以内の新しい木造住宅の場合

築10年以内の新しい木造住宅の場合

築10年以内の新しい木造住宅は、1階部分が完全に潰れているケースが多く見られました。そうかと思えば、隣に建つ築20年、30年の木造住宅が倒壊を免れています。この差は何かというと、基礎と土台をつなぐアンカーボルトが機能し、柱脚が土台から離れていなかったこと、地震の力に対抗する耐力壁の量、壁の配置バランス、軸組の変形を防ぐために入れる筋交いの方向、剛心と重心の位置関係(重心と剛心が近いほど地震に対する抵抗力が高くなる)など、さまざまな要因が考えられます。

また、耐震等級2相当と言われていた住宅でも倒壊してしまったケースが見られました。これは1階と2階の柱や壁の位置がズレている部分が多く地震力にうまく抵抗できなかったことなどが予想されます。
地盤が軟弱な場所、低地では屋根の瓦や廃材が飛び散っており、地震の揺れが増幅されたことが伺えます。また、旧耐震基準の建物は木造、RCに関係なく倒壊しており、耐震診断と耐震補強を怠ったせいだと思われます。
確実に言えるのは、設計・施工の配慮が足りない家は築年数に関係なく倒壊するということ。設計者の「経験」と「勘」だけでつくった家は壊れ、数値に基づいてきちんと構造計算された家は古くても残り、人の命を守ったのです。

地震に対するさらなる安心を得られる「耐震等級3の家」

地震に対するさらなる安心を得られる「耐震等級3の家」

では、東海地震に備えて行うべきことは何でしょうか? まず新築の木造住宅については、仕様規定の遵守または構造計算をするべきです。また、地盤の状況に合わせ基礎の形状を選択し、地盤が軟弱な場合は地盤補強を行います。耐震等級3を取得するとさらに安心です。
既存の木造住宅についても、できる限り耐震診断をしてください。耐震補強工事には費用がかかりますが、建物が倒壊すると周囲へも多大な迷惑をかけます。東日本大震災で亡くなった方たちの中には、逃げるための最短ルートに建物が倒壊して塞がれ、回り道をしたせいで津波の犠牲になった方もたくさんいたのです。
地震が発生して建物が倒壊すると、自分だけでなく、周囲の人の命まで奪ってしまう恐れがあることを忘れないでください。

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ライターのご紹介

木村 大作(きむら だいさく)
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木村 大作(きむら だいさく)

(株)好文堂代表取締役。早大卒業後、リクルート、浜松百撰を経て2007年独立。住宅、スポーツ、企業紹介、学校案内、人物インタビューを得意とする。著書「失敗しない家づくりの法則」。静岡コピーライターズクラブ(SCC)会員。

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