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日本の中古住宅、75%が耐震性に不安あり!

いま日本にあるすべての住宅のおよそ35%が、震度5強程度までしか耐えられない「旧・耐震基準」の家です。

耐震基準は1981年に震度6強~7程度まで耐えられる「新・耐震基準」に改正されましたが、技術的な面で課題があり、2000年に再度改正されました。ですが熊本地震でも問題になったように2000年より前の住宅は「新・耐震基準」といえども不安が残り、その数は日本の総戸数のおよそ75%にものぼります。

現在住宅の土台となる基礎は[コンクリート+鉄筋]が当たり前ですが、1981年以前は地面に置いた玉石の上に直に柱を建てたり、コンクリートを使っていても鉄筋が入っていない[無筋基礎]が主流でした。

柱が接合金物(引き抜け防止の金属プレート)を使わずクギだけで留めてあったり、壁も強度を保つ[筋交い]が入っていなかったりと、耐震性能の不足は明らかです。
 

劣化や断熱性能不足も、中古住宅の大きな課題

中古住宅はメンテナンス不足による劣化も、深刻です。

ある住宅では壊れた雨どいを長年放置したため、外壁のヒビ割れを伝って雨水が内部に浸透。柱や梁は腐ってボロボロ、シロアリ被害も甚大でした。シロアリは地震で死者の出る被害を出すほど、建物の構造を弱らせます。とくに築年数が経っている住宅でシロアリ被害は要注意です。

(画像提供:一般社団法人 住宅医協会)

また中古住宅の断熱性能は、総じて低いものです。まったく断熱材が入っていない住宅も多く、エアコンが効かず冷暖房エネルギーの浪費が大きい、厳冬期の脱衣所が外気温とほぼ同じくらいで、入浴後のヒートショック(急激な温度差で心筋梗塞等を引き起こす)になりかねない状況も散見されます。

このように日本の中古住宅は、
・耐震性の不足
・メンテナンス不足による劣化
・エネルギーの浪費
・ヒートショックを起こしかねない温熱環境
といった、いくつもの課題を抱えているのです。
 

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中古住宅の改修、なぜ難しい?

実は住宅建築に関わる人にとって中古住宅の改修は、「開けてみなければ分からない」ブラックボックスのような、二の足を踏みたくなる仕事でした。

性能や間取りといった“住み心地向上”のための診断・改修工事は、

「思ったように性能が改善しない」
「費用の積算が難しい」
「…できれば避けたい」

という考えが根強かったのです。これはゼロからつくる新築とちがい、中古住宅は1軒1軒どれも構法も築年数も状態もまちまちで、ベテランの経験的判断がないと進まないという事情があります。

現場ごとに臨機応変な対応が必要で、技術の積み上げが難しく、今回OKだった方法が次の中古住宅で通用するとは限らない。改修に意欲のある建築士・大工でも具体的な方法論がわからない…と歯がゆい思いをしていたのです。

そこでイギリスの古い建築を診断・活用する学問「建築病理学」に倣い、民間資格「住宅医」の制度を整備、人材育成をすすめてきました。
 

「住宅医」とは、中古住宅を「治す力」を持った建築士

「住宅医」はただ建物の状態を調べるだけでなく、「治す力」も兼ね備えた建築士のことです。

建物現況の調査・診断スキルや改修の知識に加え、依頼者にもっともふさわしい改修プランを立案でき、高い技術力を持って施工・アフターフォローまで実践できるエキスパートだけが、「住宅医」として認定されます。2017年6月現在、全国で住宅医は80名ほどいます。

依頼を受けた住宅医は、まず【事前調査】に訪問。1~2名で2時間程度の調査を行います。

(画像提供:一般社団法人 住宅医協会)

問題点が見つかった等で、さらに依頼主から要望があれば【詳細調査】を実施。10~20名程度でチームを組んで可能な限り建物の隅々にまで入り込み、床下や小屋裏まで徹底的に調査します。

【 詳細調査 6つの診断項目】

[1]劣化対策_ひび割れ、水浸み・サビ・結露、腐朽、シロアリ等
[2]耐震性_地盤・地形、建物の構法・形状・外装・重量等
[3]断熱性_断熱材、断熱性能(UA値・Q値)、熱損失割合、日射遮蔽性能等
[4]省エネルギー性_冷暖房・給湯等の設備機器、一次エネルギー消費量実測等
[5]バリアフリー性_出入り口の段差・通路幅・手すり、浴室・トイレ形状、部屋配置等
[6]火災時の安全性_内外装の防火性能、ひなん路、警報器・消火器設置等

(画像提供:一般社団法人 住宅医協会)

調査結果はチーム全体による検討会を開き、1ヵ月ほどかけ分析・診断。1冊60ページ程の「住まいの診断レポート」として依頼主に提出します。

調査・診断はここまで。費用は住宅の規模や地域により異なりますが、おおよそ20~30万円程が目安です。この先の改修プランは、依頼主のライフスタイルや予算等をヒアリングしながら、さらに検討していきます。

(画像提供:一般社団法人 住宅医協会)

一般に中古住宅売買時に行われる建物診断は、目視による劣化検査が中心です。

その家を売買の対象としてではなく、実際に住むために購入し“性能は新築並みに向上させ、長く快適に暮らしたい”と考えるのなら。改修を見据えた知識と経験値を持った住宅医の診断は、必ず役立つことでしょう。
 

住宅医が身近な今こそ、リフォーム・リノベで理想のわが家を!

住宅医が身近な今こそ、リフォーム・リノベで理想のわが家を!

若い夫婦が実家をリフォームして住み継ぐ。
中古住宅を買ってリノベーションする。

今の若い人たちの新築に縛られない、賢いお金の使い方ができます。実際新築で安普請の家を建てるより、中古住宅を改修した方が性能も十分なうえ、コストも抑えられる例がたくさんあります。

ひと昔前は東京からわざわざ改修の専門家に来てもらうこともありましたが、今は違います。身近な住宅医に声をかければ、すぐ相談に乗ってくれるはずです。

リフォーム・リノベーションに不安はつきもの。ですが住宅医といっしょにプランを考えれば、コストや性能に満足しながら、中古住宅・空き家ならではの隠れた魅力も引き出せるはずです。

これからの時代、多くの人がリフォーム・リノベーションでその家族らしい、豊かな住まいを手に入れてください。


【 ま と め 】

■日本の住宅の75%は、耐震性に不安がある
■中古住宅は「耐震性・劣化・エネルギー浪費・温熱環境」が課題
■「住宅医」とは、中古住宅を「治す力」を持った建築士
■6つの詳細項目を調査・診断し、費用は20~30万円程度
■その先の改修プラン立案・施工まで、ワンストップで「住宅医」が担当
■長く住むためのリフォーム・リノベを考えるなら、住宅医の診断が安心

[参考リンク] 一般社団法人 住宅医協会 http://sapj.or.jp/

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ライターのご紹介

嶌本 倫子
嶌本 倫子

損害保険会社・出版社編集を経てフリーエディター・ライター。分野は旅と宿、住まい・収納、マネー、防災など様々です。

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