静岡県西部
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春とは名のみの小寒い風が頬をかすめる昼下がり、築11年を迎えたI邸を訪ねた。玄関先のガレージには、カラフルな自転車がずらり。家に入ると、吹抜けの玄関土間の広さに息をのむ。「ここまでが外、ここからが内と明確に仕切らず、内と外が緩やかに繋がるように土間を設けました」というご主人の言葉通り、どちらともとれる曖昧な空間が、何とも言えない開放感と心地よさを醸し出している。
土間からLDKに上がると、使い込んだスギの床の柔らかな感触が足にやさしくなじむ。漆喰の壁は新築当時と変わらぬ白さを保ち、窓から射し込む光を反射して、室内を明るく照らす。「素朴な材を使って、手間をかけて丁寧に建てた家です。既製品は使わず、家具も手づくりのものがほとんどです」とご主人。
室内は、外の寒さを忘れさせる程の暖かさ。「うちは薪ストーブのヘビーユーザーで、10月から3月頃までほとんど毎日使っています。薪ストーブって、火を点けて暖まるまで1時間程度かかるんですよ。だから、時間に追われた生活を送る日本人にはあまり合わないかもしれません。でも僕たちにとっては、もはや暖房器具というよりもライフスタイルそのものです」と語るご主人は、毎朝5時半に起き、家族の起床時間までに薪ストーブで部屋を暖めておくのが日課。また、夕食後には自然と薪ストーブの周りに家族が集い、揺らぐ炎を眺めながら会話の花を咲かせるという。一方、夏は、窓から窓へ抜ける風と、ひんやりとした土間が家中に涼をもたらしてくれる。周囲の自然と上手に付き合いながら、暮らしを丁寧に愉しむ夫妻の穏やかな笑顔が眩しい。
「子どもの手が離れ、自分の時間に少しゆとりができました」と語る奥さまは最近、発酵食品と絵本収集に夢中。一方、ご主人は家を建てた頃から自転車が趣味。「夫婦で一緒に長く楽しめる趣味を持ちたくて自転車を始めたんですが、私はなかなか付き合えなくて(笑)。でも、最近はマウンテンバイクに乗ってみたくなりました」と語る奥さまの傍で、ご主人が嬉しそうに微笑む。これからはようやく二人で共通の趣味を愉しめそうだ。
リビングの窓辺で庭を眺めながら一休み。大きな掃出窓は四季を描くキャンバス。静寂の中で薪の燃える音だけがパチパチと鳴り響く
ウッドデッキでハンモックに揺れながら愛犬と戯れる午後のひととき
キッチンの背後の食器棚は造作品。パントリーには発酵食や保存食の瓶詰が並ぶ
階段を下りた先に和室がある。普段は引き戸を開け放ち、室内も緩やかな繋がりを持たせている
南面には土庇(柱を立てた深い庇)が設けてあり、雨の日でも窓を開けて風情を愉しめる。庭のコナラの樹々は、夏になると葉を繁らせて木陰をもたらし、冬は葉が落ちて光を室内に採り込める
愛犬のケージと自転車を置いても広さに余裕がある土間。いずれはここでご主人に教わりながらDIYをやるのが奥さまの夢
ガレージには自転車を10台格納。ご主人の凝り性ぶりが窺える
薪ストーブは家族の暮らしに欠かせない存在。ピザや煮込み料理作りなどに利用することも
夫妻と高校生・中学生のお子さま、そして愛犬メルが暮らすI邸。ご主人は『桂建設』の大工職人で、自宅も自身で木工事を手掛けた。ご主人は自転車、奥さまは料理と絵本収集が趣味。
フリーライター