「『石牧建築』さんらしい家を作ってください」。夫婦の衝撃的なその一言から始まったSさんの家づくり。「見学会で見たような素敵な家をつくってくれると信じていたので、どんなプランが出てくるのかワクワクしました」と奥さま。そんな期待を一身に受けた女性設計士の西久保さんは、大自然に恵まれた現地に足を運び、庭にある大きな桜の木を中心にプランニングしようと決めた。切り妻屋根と総2階のシンプルな外観は森の中の隠れ家のような佇まい。外壁全面に張った天竜杉に微かな陰影が浮かんでいる。室内にはダイナミックな吹抜けの大空間が広がり、庭の桜の方向に向けて無垢の床を直角に張ることで、視線が桜に向かうように設計されているのがポイントだ。大きな窓一面に広がる、四季折々の庭の景色を眺めながら暮らすよろこびと感動は、言葉では言い尽くせない。柱と梁をあえて露出した真壁づくりの空間は、伝統工法のなかにも斬新な美意識をが感じられる。建築家による上質なデザインと精度の高い大工の技がコラボして完成した木の家は、夫婦が望んだ通りの「ザ・『石牧建築』の家」に仕上がった。